2019年4月から運用が開始された新しい在留資格「特定技能*」ですが、この制度で就労する外国人労働者はどの程度の日本語能力を持っているのか、雇用する側としては気になる点だと思います。そこで、特定技能外国人の日本語レベルについて解説します。 *特定技能には「1号」と「2号」がありますが、ここでは便宜上「特定技能1号」のことを「特定技能」と表現します。 「特定技能」へのルートによって異なるひと口に「特定技能外国人」と言っても、その経歴は様々ですが、次のようなルートが考えられます。
JLPT N4やJFT-Basicのレベルとは?JLPT N4やJFT-Basicに合格するには、どのくらいの能力が必要なのでしょうか。 JLPTは、次のようにレベルの目安を公表しています。 また、JFT-Basicでは、テストの目的を 『主として就労のために来日する外国人が遭遇する生活場面でのコミュニケーションに必要な日本語能力を測定し、「ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力」があるかどうかを判定すること』としています。 このような表現だと、「カタコト」程度なのではないか、と思いがちですが、これらのレベルをCEFR(外国語の学習・教授・評価のためのヨーロッパ言語共通参照枠「セファール」)で表すと「A2」であり、日本人にとっての英検準2級がこれに相当します。英検準2級といえば、高校中級程度(2級で高校卒業程度)です。そう考えると、カタコト以上のレベルであることがわかります。 「なんだ、わりとレベル高いのでは?なぜ、母国語による支援が必要なの?」と思われるかもしれません。しかし、(日本人外国人を問わずに求められることではありますが)「特定技能」においては、適正な雇用であることが大前提であり、雇用条件について労働者がしっかりと理解していることが必要なのですが、では、雇用条件書を見せられて、果たして内容を余すことなく理解できるでしょうか。 「変形労働時間制」 「割増賃金率、法定超月60時間以内の場合は…」 「労使協定に基づく賃金支払時の控除」など 日本人でもあまり正確に理解しないまま雇用契約を交わしている人も多いと思われます。 そして、N4で網羅している漢字は300字程度で、小学校中学年レベルであるため、読み書きに関しては、特に非漢字圏出身者の場合は理解が難しいことから、「特定技能外国人が十分に理解できる言語にて」雇用条件に関わる重要事項についてのガイダンスや不当な扱いを受けていないか確認するための定期面談を行うこと、とされており、実務的には「母国語による」支援を行うことが義務付けられているのです。 逆に、「母国語での支援体制を整えることを義務付けているなら、日本語能力はなくてもいいじゃないか」という意見もあるかと思います。しかし、やはり、建設業や機械操作などにおいては、安全衛生確保の観点から、現場にいる他従業員が危険回避のためのとっさの指示を日本語で出した時に理解できなければ事故につながりかねませんし、介護や外食業においては、相手があってのビジネスですので、最低ラインとして、この日本語レベルを求めることは妥当であると言えます。 結論特定技能の在留資格の要件を満たしている外国人は、日常生活において、ある程度のコミュニケーションは可能であると言えるレベルの日本語力を身に着けていると言えます。 読み書きの能力については、出身国の言語によって大きく左右されることが想定されます。 そして、日常の生活場面において十分なコミュニケーションが取れるからといって、日本語学習の継続をそのまま外国人の自主性に任せっきりにせず、ぜひ、職場全体で機会を設けて外国人の日本語力向上に力を貸してあげてほしいと思います。 日本が目指すべき共生社会において、やはり言語はその基礎となります。「郷に入っては郷に従え」というのではなく、外国人が社会に馴染むための手助けをしてあげることで、外国人労働者のモチベーションが向上し、その結果、しっかりとした日本語能力が身に着けば、「母国語」によらずに支援を遂行することが可能となり、雇用主側にもメリットが生まれます。 お問い合わせ
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東京都内に本社又は主たる事業所がある中小企業等を対象に、日本語能力試験概ねN2レベル以下の外国人従業員への、ビジネスに必要な日本語教育等を目的とした研修の経費の一部が助成されます。 「技術・人文知識・国際業務」や「特定技能」の在留資格を持つ従業員が対象となります。 特に、「特定技能」では、在留資格が許可される要件がN4程度(日常会話程度)ですので、日本語能力には伸びしろがあります。日本語が上達することで、業務や他従業員とのコミュニケーションも円滑になり、本人のモチベーションにもつながるのではないでしょうか。なによりも、日本社会で共生していくために、共通の言語は必要不可欠です。そのため、「特定技能1号」の雇用においては、「日本語教育機会の提供」が義務的支援に含まれています。しかし、雇用主側の義務は「機会の提供」であり、実際に日本語教育を受けるかどうかは、本人次第となっているため、日本語を教員から習っているという特定技能外国人は少ないのが現状です。 雇用主がもっと主体的に、ダイレクトに、特定技能外国人に日本語教育の機会を提供してあげられれば、会社全体の利益につながることが期待できるのではないでしょうか。 助成金の概要 当該助成金の応募期間は、令和4年5月31日(火)から令和4年11月4日(金)まで。 助成の対象となる期間は、交付決定の日から令和5年2月28日(火)まで。 助成金額は、助成対象事業を実施する上でかかる経費の1/2(最大25万円)。 詳しくはTOKYOはたらくネットをご参照ください。 もうすぐ「帰国困難者」がいなくなる。 コロナのせいで、飛行機が飛んでいない、飛んでいても減便されて席が確保できない、席はあっても高額でとても買えない― 従来予定されていた活動を終了しても、コロナが原因で帰国できずにいた外国人には、現在まで、「特定活動」という在留資格が許可され、アルバイトしながら日本に滞在することが許される特例措置が施されています。 通常であれば、出国指導が入るような在留不良歴のある外国人でも、出国できないところを、わざわざオーバーステイですね、と言って収容(そして、仮放免)していては非人道的ですので、猫も杓子もと言った感じで、特定活動の在留資格で在留する外国人が急増しました。 そして、今年に入ってからは各国で移動の制限もなくなりつつあり、日本でも観光客の受け入れ再開の動きもある中で、いつまでこの特例措置が続くのか…と入管業務を扱う同業者の中では複雑な思いで現状を静観していました。 そして、ついに昨日から、今までは6か月間の在留期間の特定活動がほぼ無条件(実際には、帰国が困難である立証資料や説明を提出し、審査を受けますが)で与えられていたところ、今後は4カ月間の在留期間となり、6月30日以降の許可後は、もう更新はしない、という措置に変更になりました。 外国人アルバイトもいなくなる!? 今、この「特定活動」の外国人をアルバイトとして雇用している場合、今年の10月末には、アルバイト人材が究に不足する可能性が急浮上したことになります。 特に飲食店でのアルバイトが多いのではないかと思いますが、もともと人手不足の業界ですので、今からアフターコロナに向けて、人材確保の準備を始める必要があります。 もちろん、これから留学生も多く入国してきますが、新規入国の留学生は、日本語力が不足していたり、アルバイトできる時間帯が限られていたりと、簡単に人手不足を解決できる手段にはなり得ないてんが問題です。 そこで、「特定技能1号」の在留資格を検討する余地が生じます。今アルバイトをしている外国人たちも、要件を満たせば「特定技能1号」に移行して、最大5年間(*)の在留が可能になります。そして、「特定技能1号」は、週28時間までという制限がありません。制限がないというよりは、フルタイム雇用することが前提の資格です。 (*)現在、この在留期間の上限撤廃が検討されています。 早めの準備で人材確保を。 「特定技能1号」の雇用を検討するうえで一番重要な要件は、外国人が「特定技能試験」と「日本語試験」に合格していることです。残念ながら2022年6月/7月開催の特定技能試験はすでに受付を終了してしまっていますが、次回10月開催予定となっており、申込受付は8月頃からの予定のようです。申込みに先立って「マイページ」の登録が必要になりますので、マイページの登録だけでも、今のうちに行っておくようにしたいですね。 タイミングによっては、一度帰国しなければならないかもしれませんが、それでも海外での試験開催は場所や日程に限りがあるので、日本にいるうちに受験が可能なら、チャンスを逃さずに受験しておくことが、1日でも早く、特定技能外国人労働者として就労開始することができます。 当事務所では、特定技能1号の在留資格取得について、ご相談・ご依頼をお受けしております。 外国人側の試験合格、受入れ企業側の雇用体制整備など、準備が必要な分、採用決定から実際に就労を開始できるまで、時間がかかりますので、どうぞ、お早目にご検討ください。 |